coronavirus 神経変性疾患・精神疾患・発達障害で障害されるタスク

統合失調症

幻覚・妄想・思考混乱などの陽性症状、自発的行為の減少・思考貧困・感情平板化・意欲欠如・自閉傾向などの陰性症状、記憶力・集中力・判断力の低下などの認知機能障害が現れる。 ドーパミン神経系の過活動が原因であるとの説が中心的である。 プレパルス抑制(驚愕反応を引き起こす強い刺激の直前に弱い刺激を先行させると驚愕反応が大幅に抑制されること)の減弱、およびミスマッチ陰性電位の減弱を統合失調症の中間表現型としようとの提案がある。 プレパルス抑制とミスマッチ陰性電位はともに自動的な予測の結果であり、統合失調症による自動的な予測の減弱を指標にしようという考えである。 自分の行為・思考のモニターする自己モニター機能、およびそれに伴う sense of agency(動作主感覚)の劣化が統合失調症の多くの症状の基本にあるとする説がある(CD Frith, The cognitive neuropsychology of schizophrenia, 1992)。 この説はさらに、自分の意図を他人に拡張し、自分あるいは他人の意図・理解をメタレベルで表現するメタ表現の障害で統合失調症の症候のほとんどが説明できるとする。 統合失調症による sense of agency の変容が観察されている(Haggard, Nat Rev Neurosci 18:197, 2017)。

自閉症

社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用に持続的欠陥があり、反復的な身体運動・会話と強い固執と拘りを示す。 自閉症患者では前頭前野内側部の活動が低下しているとの報告がある。 WCST 遂行成績が自閉症患者で低下しているとの報告(Rumsey, Hamburger, J Autism Dev Disord, 20:155, 1990; Leung, Zakzanis J Autism Dev Disord 44:2628, 2014)、階層的文字課題(例えばたくさんの S で構成された H)で個別文字に強い影響を受けるとの報告(Behrmann..Minshew, Neuropsyhologia 44:110, 2006)があり、社会性だけでなく執行機能が広く低下している可能性がある(Fujioka, Jpn J Learn Disabilit 26:474, 2017)。

パーキンソン病

細胞内に α シヌクレインが凝集したレビー小体の沈着と大脳基底核の黒質緻密部のドーパミン細胞などの神経細胞が死滅が特徴的に見られる。 レビー小体の沈着がドーパミン細胞に限局して始まると運動症状が中心のパーキンソン病になり、大脳皮質に広く起こると認知症状が中心のレビー小体型認知症になると考えられている。 ともに嗅覚障害や睡眠障害から始まることが多いとされる。パーキンソン病では発症から 10 年以降に認知症状が現れることが多い。

アルツハイマー病

細胞外の脳組織におけるアミロイド β の沈着と神経細胞内におけるタウの沈着による神経細胞死が疾患原因の有力仮説である。 まず海馬を含む側頭葉内側で、次いで頭頂葉、最後に大脳皮質全体に障害が広がると考えられている。 対応して、記銘力障害から始まり、次いで視空間認知を含む認知領域の障害が現れ、最終的には全ての認知能力が障害される。 初期の記銘障害をサルで調べる最も簡単なタスクは Visual preferential looking task および Visual paired comparison と思われる。 これらは再認記憶のうちの自動的・受動的な過程である親近性記憶(familiarity memory)を調べる。

Visual preferential looking task

Wilson, Goldman-Rakic (Behav Brain Res 60:79, 1994).

Visual preferential looking task

物体像を最大 5 秒提示する。目線が物体から離れたら提示終了。 同じ物体像を2回提示し、見る時間を1回目提示と2回目提示の間で比較する。 健常サルは1回目提示のときにより長く見る。この差を familiarity 記憶の強さの指標とする。