widgets (詳説)概念空間のグリッド符号化

嗅内野(entorhinal cortex)で発見されたグリッド符号化が、物理的な空間における物体の位置を符号化するためだけでなく、いくつかの直交した概念の軸からなる意味空間における物体の位置を符号化するのにも使われていることを示すデータが集まりつつある。世界のいろいろな事象の間にある共通性を抽出して表現することにより、限られた疎な経験から経験してない事象を推測する基礎として注目される。

Constantinescu, O’Reilly, Behrens (2016) Organizing conceptual knowledge in humans with a gridlike code, Science 352:1464

Science 352:1464

ヒト fMRI。首の長さと足の長さで張った2次元空間で鳥の形を決めた。ふたつの形を提示し、一方から他方へ変換するための首/足変化比率を指定する課題でいろいろな形とその関係を経験する。6 個の形と 6 個の褒美(クリスマス関連の物)の連合を学習。空間内のいろいろな軌跡の移動に対応する形変化を見せ、続く形変化を想像させ、この軌跡が通る褒美を3択から選ばせれる課題(図下)遂行中に fMRI 撮像。正6角形符号化に対応する角度の移動とそれ以外の移動で活動が有意に異なる領域を探したところ、vmPFC などが現れた。被験者ごとの活動の違いの大きさと成績は正相関した。

Bongioanni..Rushworth (2021) Activation and disruption of a neural mechanism for novel choice in monkeys, Nat Neurosci 591:270

Nat Neurosci 591:270

マカク fMRI。ドットパターンの色が報酬量、形が報酬確率を表す(それぞれ 10 段階)。ふたつの刺激からひとつを選択すると確率的に報酬が与えられる。それぞれの次元(図の灰色行内または灰色列内)での選択を3ヶ月訓練した後に、ふたつの次元の情報を統合する必要のある選択をさせている間に fMRI。ひとつの刺激だけ提示する実験(選択なしだが報酬は予測する)で、続く試行間で刺激が2次元刺激空間の正6角形グリッド方向に変化したときとそれ以外で活動の変化量が有意に異なる領域を探したところ、mPFC 前方部が現れた。

Bellmund..Moser, Doeller (2018) Navigating cognition: spatial codes for human thinking, Science 362:654

Moser を含んだ総説

Behrens..Kurth-Nelson (2018) What is a cognitive map? Organizing knowledge for flexible behavior, Neuron 100:490-509

Oxford, UCL, DeepMind の研究者による興味深い論考