widgets 7. 上位注意制御 Supervisory attentional control

上位注意制御

現環境で適用可能な多くの反応セットの中でより難しい反応セット(あるいはタスクセット)を、能動的観点から選ぶ上位の制御。Norman & Shallice (1980)により Supervisory attentional system (SAS)として提案された。Split attention 条件での前帯状皮質背側部(dACC)の賦活(Corbetta..Petersen, J Neurosci 11:2383, 1991)から始まって、SAS を必要とする局面での dACC の賦活がヒトとサルで広く報告されている。Botvinich と Cohen らは 2000 年代前半に、反応コンフリクトのモニターがこの機能の本質であるとする有名な説を提案したが、反論も多かった。Botvinich と Cohen はその後、dACC はそれぞれの認知制御過程の効率(予測結果からコストを引いたもの)を計算して比較し選ぶという説を提案した(ShenhavBotvinichCohen, Neuron 79:217, 2015)が、これは SAS をどうやって行うかの説になっている(認知制御過程を選択の対象に定義した点は新しい)。上位注意制御と反応抑制は支配的な反応またはタスクセットを抑制しそれ以外を選ぶという点では似ているが、反応抑制が反応レベルでの抑制であるのに対し、上位注意制御はタスクセット(あるいは認知制御過程)レベルでの選択である。レベルが違い、またずっと難しい。タスクシフトとも似ているが、タスクシフトは新たに採用するタスクセットがどこかで決められた後にどうシフトするかが中心であるのに対し、上位注意制御は注意を向けるべき認知制御過程の選択が中心。

上位注意制御に本質的な神経活動を決めるには、上位注意制御を引き出すためにタスクが設けた具体的設定に特異的な神経活動と、上位注意制御に共通な神経活動を識別することが肝要。そのため、ひとつのタスクを推薦するのは難しい。Hayden..Platt (2011)のタスクは比較的訓練が容易ではないか。

上位注意制御を調べる課題

上位注意制御を調べる課題

例えば Hayden..Platt (Nat Neurosci 14:933, 2011)

マカクでの細胞活動記録。青色短標的と灰色長標的のどちらかをサッケードで選ぶ。青標的を選ぶと報酬がでる。この報酬量は、最初 0.31ml で、選ぶたびに 0.02ml ずつ減る。灰色標的を選ぶと青標的への報酬量がリセットされる。リセットコストがある(報酬なし、ITI 延長)。ITI の延長時間は灰色標的の長さが示す(0.5~10.5 秒、灰色標的を選ばない限りはブロック内で一定)。サルは、ITI 延長時間が長いブロックでは報酬がかなり減ってからリセットを選び、ITI 延長時間が短いブロックでは早めにリセットを選んだ。多くの ACC(前帯状皮質)細胞がサッケード開始付近で活動したが、この活動はリセット選択へ向けて次第に大きくなった。

マーモセットに適用する場合は反応をタッチに変更した方が訓練が容易だろう。また、マーモセットでは摂水量が少ないので、液体報酬量の減少をタスクに使えるかどうか検討が必要であろう。